ユーザの私生活を丸裸にするAmazon Silk

米国時間9月28日朝のイベントで発表された7インチの「Kindle Fire」。
Kindle Fireは「Amazon Silk」と呼ばれるウェブブラウザが搭載される。Amazon Silkはスプリットアーキ技術を使うことで、ユーザに高速なWeb体験を提供できるそうだ。
このスプリットアーキ技術とはKindle Fire上で動作するクライアントアプリとなるブラウザとAmazonクラウドEC2を連動させ、クラウド側でコンテンツの先読みや圧縮などを行うことでクライアントとなるブラウザ上の処理を速くできる技術だ。
こういったサーバ側で処理をさせるという技術は10年くらい前に山のようにアイデアや特許が出されているし、最近ではOperaMiniとかもサーバと連動するといったアプローチをとっている。そのくらいの時期に次世代ブラウザを考えていた技術者にとって、このスプリットアーキ技術は「えっ、何これ??」といったものであろう。
クライアントの代わりにサーバ側で処理をするという方式は、クライアント側の処理性能が高くなってきたこの時代にはあわないアーキだと思っていたし、どちらかというと当時からキワモノ技術的な扱いをうけていた。
それがAmazonによって生まれ変わろうとしている。スプリットブラウザ技術により性能の悪いマシンでも高速なWeb体験を得ることができるというベーシックな、誰でも考えつく方式*1を実際にAmazonが採用した。「コロンブスの卵」的に流行るのだろうか。それとも「イノベーションのジレンマ」のようにブラウザそのものを再定義するのだろうか*2
何にせよ、ユーザによりよいWeb体験を提供するということは悪いことではない。ユーザから取ったら、裏で何が行われていようが、気持ちよく動けばそれでよい。
という建前はよく聞く話だが、意味もなくAmazonがサーバを使ってまで、ブラウザを革新しようとしているわけではないことは明らかである。
そう、ユーザのブラウザ操作を抑えることにより、「ユーザの行動履歴」を取得しようとしていることはあきらか。ユーザがどのコンテツにいつ、何時、アクセスしたのか、その文脈は何であったか、などなど、Amazonにとっては嬉しい情報が山のように取得できることとなる。まさに、スプリットアーキ技術はユーザの私生活を丸裸にする技術と言えよう。
ユーザの行動履歴をマーケティングに活かすことで、よりよいユーザ体験をユーザへ提供できる。Amazonのマーケットのレコメンドに使えるだけでなく、次の新しいニーズを見つけ出すのにも使える。*3
新しいユーザ体験を提供するという建前のもと、ユーザの行動履歴を搾取するスプリットアーキ技術。どこまでユーザを惹きつけることができるか楽しみだ。

*1:イデア自体はしょーもないが、実際にサービスまで持って行こうとすると恐ろしい技術力が必要とされる

*2:とか言って、もてはやしている輩が多い

*3:とは言え、行動履歴のマイニングは難しくて誰にでもできるものではないが・・・